
ローランドのシンセサイザー「JUPITER-Xm」を購入した。9万9000円(送料含む)。
JUPITER-XmまたはJUPITER-Xは、できればほしいと前から思っていた。10万円を切ったら買おうとしていた。本当はアフタータッチ付き61鍵盤のJUPITER-Xが良いのだが、10万円未満にはなかなかならないだろう。JUPITER-Xmについて、「デスクトップ音源ミニ鍵盤付き」と評している人がいて、まあ、音源モジュールだと考えてもよいか、と納得し、安い方でと思うようになった。
ここ数年ローランドのシンセをけっこう買ってきた。JUPITER-Xmの目新しさ、魅力はどこにあるかというと、私にとってまずは、JX-8PモデルとJD-800モデルであろうと思う。
JX-8Pモデルの「JX-08」、JD-800モデル「JD-08」が発売されているが、オリジナルモデルにあった音色名表示が省略されており、その点ではどうも買う気がしない。ソフトウエアではJX-8Pモデルの「JX-8P Model Expansion」、JD-800モデルの「JD-800 Model Expansion」「JD-800 Software Synthesizer」が出ているが、これらもまだ買っていなかった。JD-800は、当時は高くて買う気になれず、JD-990もなんとなく見送っていたら、中古が高騰してしまった。そんなわけで、JUPITER-XmとJD-800 Model Expansionを買えば、JX-8PモデルとJD-800モデルをハードウエアで使えるなぁ、と思ったのだった。
JUPITER-Xmを買ったので、JD-800 Model ExpansionのLifetime Keyも買った。Roland Cloudの表示は149米ドルであるが、円安の折でそれが1万8666円になり、それに消費税を加えると2万533円になるという。高いけれど、先送りしても買い時を悩むだけなので、買ってしまった。インストールした様子が下の写真だ。

JUPITER-Xmを買った流れはもう一つある。昨年末にSonicwareのelz_1を買い、コンパクトなシンセでスピーカー付きというものが、老後の支えとして好適であろうと考えるようになった。その流れで、microKORG S、JD-Xi、UltraNovaが来たわけだが、どれを買っても、キーボード、音源、オーディオインタフェース、スピーカーが揃ったものはなかった。JUPITER-Xmは4.4kgと少し重いが、先ほどの4点をすべて備えている。老後にはこれかな、という気持ちもあった。
では音を一つ。
JUPITER-Xm Scene 01-01 "Single Tone /SL1"
JUPITER-Xmの最初の「シーン」を手弾きした。JUPITER-8モデルの「JP001 Berlin Night」が鳴り、SL1スライダーを上げるとやはりJUPITER-8モデルの「JP016 Bright Pad 2」が重なってくる。最後の伸ばしではモジュレーションホイールを少し上げた。SL1を上げなければ一つのトーンが鳴るようになっており、トーンのオーディションに使える。
JUPITER-Xmを使って最初の感想は、液晶ディスプレイが安い、ということであった。有機液晶タイプを使ってほしかった。こういうところがせこい。
JUPITER-Xmは、それなりに売れたのではないかと推測している。JUPITER-Xよりも発売が早かったので、待ちきれずJUPITER-Xmを買った人もいただろう。そして、それなりの数の人が気に入らず手放して、中古を目にすることが増えたのであろう。
JUPITER-Xmの訴求ポイントは「今も熱烈なファンの多いJUPITER-8、JUNO-106、SH-101などのアナログ・シンセサイザーから、XV-5080やステージ・ピアノ RDシリーズといったデジタル・シンセサイザーのサウンドまでをモデリング。これらの個性的なサウンドをボタンひとつで呼び出せます。」であるだろう。ただ、残念なことに、JUPITER-8、JUNO-106、SH-101を弾いている、という感触は乏しい。音色変更の操作が複雑で、興を削ぐ。
JUPITER-8、JUNO-106、SH-101を弾いている感触を現行機種で味わうなら、SYSTEM-8にそれらのソフトウエアシンセサイザーを買い足す方がよいと思う。画面にそっくりのパネルが表示されるし、そのパネルをSYSTEM-8設定にするとつまみのアサインがわかりやすい。SYSTEM-8の側で有効なつまみが点灯するのも、良い工夫だと思う。ソフトウエアシンセサイザーをプラグアウトしてSYSTEM-8単体で演奏することもできる。ソフトウエアシンセサイザーとプラグアウトしたシンセサイザーの間で音色データのやり取りもできる。
それに比べると、JUPITER-Xmは、確かにJUPITER-8、JUNO-106、SH-101のモデルが入っているのだけれど、それを使って音を作るのがあまり楽しくない。プリセットを組み合わせてね、という作り手側の意図が前面に出過ぎている。
ローランドは昔のアナログシンセのデジタル復刻をずっと続けているが、決定版と言えるものがない。帯に短したすきに長し、的な、中途半端な製品化を続けているように思う。SYSTEM-8を、まともなアフタータッチ付き61鍵盤(または73とか76とか)にして、同時発音数を16音に増やせば、それで決定版になったと思うのだけれど。
XV-5080モデルは、INTEGRA-7のXV-5080より親しみやすい。音色に元来のエフェクトが付いているためではないかと推測している。ただ、INTEGRA-7には拡張音色が入っていたが、JUPITER-XmではEXZシリーズとして別売になっている。
JUPITER-8、JUNO-106、JX-8P、SH-101モデルについては、プリセットが独特で、数も足りないと思う。JUPITER-8とJUNO-106の場合、SYSTEM-8標準装備の64音色がすべて入っているわけでもなさそうだ。こういうところで個性を出して意味があるんだろうか。
そんなわけでJUPITER-Xmには不満があるが、老後の切り札として、手放さないだろう。
H2