
スウェーデンClavia DMI(Digital Musical Instruments)は2023年2月16日に、同社のフラッグシップ製品の新版「Nord Stage 4」を発表した。全力を尽くして開発しているのはわかるが、同社の製品開発の行き詰まりを感じさせるものとなった、と私は思う。
これまでのNord Stageでは、新製品が出るたびに、ピアノ音色用メモリーの増大が図られていた。Nord Stage(初代)は128MB、Nord Stage EXは256MB、Nord Stage 2は500MB、Nord Stage 2 EXは1GB、Nord Stage 3は2GBであった。Nord Stage 4は2GBで3と変わらず。増量を果たすことはできなかった。
シンセ音色用のメモリー(Nord Sample Library用のメモリー)は、Nord Stage 2と同EXが380MB、Nord Stage 3が480MB、Nord Stage 4が1GBである。こちらはNord Stage 4で倍増した。
Nord Stageの旧製品のユーザーが一番欲しているのは、ピアノ音色用メモリーの増大であると思う。Nord Piano Libraryのピアノは大変に魅力的なので、ユーザーは、最大容量のXL(Extra Large)で全音色をスタンバイさせたいと思うだろう。パチパチとボタンを押して好きなものを選べれば、それに優ることはないのだ。
でも、Nord Stage 4はこれまでと変わらず2GBなのね、というのが、がっかりなポイントだ。
パソコンの場合、32ビットCPUで扱えるメモリー空間は最大4GBで、それを超える物理メモリーを活用するために、64ビット化が進められた。シンセサイザーのCPUは今でも32ビットであろう。そのため、4GB程度が限界となっていることは理解できる。
他社を見ると、コルグのKRONOSは物理メモリー約3GBに加えて仮想記憶機構を使うことで、音色メモリーの容量を増やしている。ヤマハのMONTAGEは、カスタムLSIを使って外部フラッシュメモリーへのアクセス速度を上げることで音色メモリーを増やしている。プリセット5GB相当(16ビットリニア換算)、ユーザー1.75GBと公表している。
ということで、Nord Stage 4は、音色メモリーを2GB+1GBまで増やしたけれども、それは、ユーザーの願望にこたえるものとは言い難い、と私は思う。
Nord Stage 4で、いいな、と思える点もある。鍵盤をトリプルセンサー(3センサー)にしたことは、もしかしたらいいかもしれない。レイヤー間の音量バランスを取りやすくしたことも、まあ、悪くはないと思う。オルガンにベースモードを追加したのも良い工夫だ(C1を持っているが、ベースの音がとてもよかった)。ドローバーとLEDバーを並列配置したことも、悪くない工夫だ。Nord Triple Padal 2とNord Single Pedal 2も、これまでより安価になるなら歓迎だ。
一方で、これは改悪では?と思うこともある。
シンセセクションにつまみが少ない。例えば、Nord Stage 3では「MOD ENV」「AMP ENV」のアタック、ディケイ、リリースつまみがあるのだが、これが消滅している。Nord Stageらしくないと思う。
73鍵という設定も今ひとつである。76より73の方が良いという人がいるのだろうか?
クラビア、元気ないよなー。
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