「ザヴィヌル ウェザー・リポートを作った男」を読んだ
ブライアン・グラサー(Brian Glasser)著・小野木博子訳「ザヴィヌル ウェザーリポートを作った男」(IN A SILENT WAY A PORTRAIT OF JOE ZAWINUL)を読んだ。以前、会社の後輩に「H2さんはこれを読まなきゃだめっしょ」と言われて購入し、長く本棚に置かれていた。今は風邪をひいて元気がなく、横になっていてすることもないので読んだ。老眼鏡の2.0か1.5が必要なのが悲しい。
労作である。ジョー本人だけでなく、可能な限り多くの人にインタビューし、ジョーの歩みを描き出している。英語をネイティブで話せる人ならではで、私だと、さすがにできないだろう。
翻訳と編集も悪くない。ただ、「訳者あとがき」の中で「2002年10月にはウェザー・リポートの未発表音源をまとめたアルバムが、ようやく日本でも2枚組CD『ライブ・アンド・リリースト』としてソニー・ミュージックから発表された」と書いているのは誤りである。正しくは「Live and Unreleased(ライブ・アンド・アンリリースド)」だ。どうしてこんなミスをしたんだろう?と思う。
この書籍の出版は英語版が2001年、日本語版が2003年であり、それ以降のジョーの歩みについては触れていない。2005年に録音された「Brown Street」や、2007年録音の「75」はカバーされていない。私はどの時期のザヴィヌルの音楽も好きだが、先ほどあげた2アルバムは円熟が感じられて高く評価している。まあ、生きているうちでないと聞けないこと、書けないこともあるので、全体をカバーしていないのは、まあ仕方がないことだろう。
幼少期の話はインパクトがあった。グルダとの交流は、Blu-ray Audioの評(記事はこちら)を書いた時に少し知ったが、けっこう長く、重要なものであったことがわかった。バークリー音楽院に入ったことは初めて知った。ニューヨークで多くのミュージシャンと住んだ様子は、日本の漫画界におけるトキワ荘みたいで、そういう中でジャズは育ったんだな、と知ることもできた。マイルスとの緊張感あるやりとりも興味深い。レイモンド・レヴェンサールに師事したことも初めて知った。
シンセサイザーについては、サポートをしていたエンジニアのコメントが面白い。ただ、出てくるシンセはARP 2600とオバーハイム8ボイス、ペペ程度で物足りない。これは、著者の限界だったかもしれない。
ジョーの言葉で、私にとって一番印象的だったのは次のものだ。
Q じゃあ、あなたはどんなものを聴きますか。
A 自分の曲を聴いてるよ。
見習おう、と思った。
H2