
コルグprologue-16に、インターネットで探してきたユーザーオシレーター/ユーザーエフェクトを入れてみている。この機能はオマケ的なものと思っていたが、いざやってみると、感動的だ。
シンセに波形を仕込む、というのはヤマハEX5、クラビアNord Waveなどでやってきていて、これはこれで、音を作るのに力が入って楽しい。特に、その会社の波形じゃないものを入れると、キャラクターが広がる気がして嬉しい。prologueとminilogue xdは、波形ではなく、オシレーターのプログラム(アルゴリズム)を入れられる。これは、パラメータ設定で変化させられるので、波形にはない楽しみがある。エフェクトも、なかなかに激烈で楽しい。
最初の画像は、現在入れている16個のユーザーオシレーターの一覧である。そのいくつかを使って音色を作り、演奏して録音した。以下に示す。
OrigamiLead
OrigamiはDirtBoxSynthの手によるもので、販売もしているが、ニューズレターにサインアップすると無料でもらえる。文句なくいい音で、パラメーター設定による音の変化の幅も広い。パラメータにADSRとそのアマウントがあり、時間に沿った変化も付けられる。技術力を感じさせる。
Mo2addOrgan1
先日の記事と音色名は同じだが、中身は変わっている。eurorack-prologueの一つ「mo2_add」を使っている。「ハーモニック・オシレーター」と説明されているが、加算タイプと考えてもよさそうだ。eurorack-prologueページでは、Mutable Instrumentsのオシレータをprologue/minilogue xd/NTS-1に移植したものを公開している。Mutable Instrumentsはオープンソースを標榜しており、ソースコードを他の人が使えるのであろう。Mutable Instrumentsの人の技術力も、移植をした人の技術力も敬服に値する。eurorack-prologueのオシレーターの特徴は、「LFO2」を持っていることだ。prologueはLFOが1個しかなく、それを残念に思っていた。LFO内蔵のユーザーオシレーターを使うことで、ある程度カバーできる。すごい。ただ、この音色でそれは使っていない。
Mo2fmCello
eurorack-prologueのFM(Frequency Modulation)オシレーター「mo2_fm」を使った。FMはprologueの標準装備品であるが、mo2_fmは使いやすそうである。これもLFOを内蔵している。
Mo2Granular
eurorack-prologueの「mo2_grn」を使った。Granular Formant Oscillatorなのだそうな。美しい。
Mo2String
eurorack-prologueの「mo2_string」を使った。私が使った限りでは、弦をはじいた感じ、もしくは打楽器系の減衰音しか出ないように思う。それはそれで、アナログオシレーターのサスティンと組み合わせて使うことが考えられ、魅力的ではある。この音は、日本の箏(こと)をイメージして弾いた。
Mo2vaSawBrs
eurorack-prologueの「mo2_va」を使った。vaはおそらくバーチャルアナログであろう。SHAPEノブを回すと、三角波、鋸歯状波、パルスに美しく変化する。ここでは鋸歯状波でブラスを作ってみた。ちょっと弱々しいのが面白い。
Mo2wshPiano
eurorack-prologueの「mo2_wsh」を使った。wshは、waveshapingの略。おおこれはピアノに好適、と思ったが、持続音も出るので、他の音も作れる。
Mo2wtaPiano
eurorack-prologueには「mo2_wta」から「mo2_wtf」まで6個のウェーブテーブルオシレーターがある。元は一つだったらしいが、prologueのユーザーオシレーターに容量制限があって分割したという。この音色では使っていないが、SHAPEを回すと波形が変わるので、LFOでSHAPEを変化させるだけで、waldorf microwave的な楽しさが得られる。素晴らしい。
ModalResonat
eurorack-prologueの、ここまで紹介したオシレーターは「Plaits」から移植したものだが、この音色で使っている「mod_s」(Modal Resonator)は「Elements」から移植したという。prologueの制限がいろいろあって、「真のエクスペリエンスのためにはElementsを買ってね」と述べている。上の「mo2_string」と同様に、減衰音しか出ないと思う。ただ、この味も捨てがたい。
WavesPiano
Waves(osc-waves.prlgunit)は、コルグがprologue Sound Librarianの一部として配布しているユーザーオシレーターだ。情報がほしくて検索してみたのだが、「Wavesは、2つのメインとなるウェーブ・テーブル・オシレーターと、必要に応じてリング・モジュレーション・ソースとして使用できるサブ・ウェーブから構成されています。ミックスされた出力のビット深度は、ローファイ・エフェクトによって低くすることができます」という説明しか見付けることができなかった。いい音だとは思うが、使い方がわからないので、削除候補の一番手である。
Chips2Pwm
hammondeggsmusicの「Chips 2.0(chips2)」を使った。hammondeggsmusicの技術力も大したもので、出せる音がとても幅広いオシレーターである。同じ作者の他のオシレーターも試したいが、スロットが空いていない。この音色では、Sync/Waveパラメーターを「1」にして、SHAPEノブでPWMをかけた。SHIFT+SHAPEでPWMのレイトを変えられる。prologueが本来備えるLFOをPWMではないことに使えるので、最後にフィルターのカットオフを変化させてみた。
hammondeggsmusicのユーザーエフェクトも入れてみた。まずはユーザーモジュレーションエフェクトを2つ。

Buckets!
hammondeggsmusicの「Buckets!」を使用。説明には「Buckets is a triple BBD style dual LFO chorus reminiscent of 1970's string machine choruses」と記されている。鋸歯状波にBuckets!をかけるだけでこの音になる。感動した。私が真っ先に連想したのはローランドJUNO-6の3ボタンコーラスである。あのコーラスはすさまじくて、コーラスを入れることで別のシンセになった。Buckets!の場合は、つまみでレイトと深さを変えることができ、浅くかけられる。
Hera
hammondeggsmusicの「Hera」を使用。説明には「Hera is an 80's inspired dual bucket-brigade style delay」と記されている。デュアルな分だけ、少し薄味なのかも。こちらの方がJUNO-6に近いかもしれない(参考サイト ) 。ちなみに私はJUNO-6/60を買ったことはない。ただ、αJUNO-2、MKS-50、SYSTEM-8は持っている。
次に紹介するのは、hammondeggsmusicが出している、ユーザーディレイエフェクトである。

Arrhh!
鋸歯状波にエフェクト「Arrhh!」をかけるとこの音になる。「A vocal formant filter delay FX」であるという。一つ残念なのは、ディレイ/リバーブブロックでこれを使うと、ディレイやリバーブをかけられないことだ。外でかけることになるだろう。今回の録音では外でかけてはいない。
prologueは名機である。ユーザーオシレーター、ユーザーエフェクトがこれほど面白いものとは思わなかった。久々に音色作りに熱くなった。スロット数が限られているのが残念。将来後継機を作るとしたら、増やしてほしい。後継機を出せるほど、売れているかというと疑問だが。
私もやってみたい、という人に一つアドバイス。音色切り替え時にユーザーオシレーターなどをロードすると、それなりに時間がかかる。赤いLEDにオシレーター名が表示されるまで、弾くのを我慢した方がよいようだ。たまに、ロードに失敗し、16ボイス中のいくつかが、変な音で鳴ることがある。
となると、ライブで使うのは怖いかなぁ。
H2