
ローランドの「MUSIC PRODUCTION SYSTEM MV-30 STUDIO M」を購入した。1万8800円+送料1848円。
今回はオークションで購入したのだが、うかつにも、オークションで出品されているのを見るまで、この製品のことを知らなかった。ローランドの1990年の製品で、同年に発売されたD-70の音源を多少変更し、鍵盤なし、シーケンサー付き、フロッピー・ディスク・ドライブ(FDD)付きにしたものと思われる。当時の定価は20万円。
私は1989年に就職し、その冬の賞与を握りしめて秋葉原に行き、コルグT2を買って帰った。配送なんて悠長なことは言っていられなかったのだ。ハードケースも同時に購入し、電車で帰って、そこからは自転車か徒歩かどちらかで運んだ。1984年にヤマハDX7を買って以来、5年振りの鍵盤付きシンセ購入であった。
その時の選択としては、ヤマハSY77かコルグTシリーズか、であった。音はSY77の方が良いと思ったが、76鍵盤がほしかったので、T2になった。その翌年、1990年になってすぐローランドD-70が発表され、これにしとけばよかったか、とも思った。ただ、D-70にはFDDがなかったので、T2でよかったのだ、と自分に言い聞かせた。
T2は、1998年にヤマハEX5を購入するまで、私のメイン鍵盤であった。正直、不満が多かった。同時発音数が最大16で、1プログラムに2オシレーターを使うと、それだけで8音になってしまう。ポルタメントがない。音色を変えるとボリュームペダルがリセットされる。ビブラートがきれいにかからない。これは私の勝手な推測だが、TシリーズはM1と同じCPUでより重いソフトを動かしていて、反応が悪いように思う。M1Rを後に購入して、こちらの方がいい音がする、と思った。
WinGrooveというソフトシンセを作った方にお会いした際、D-70を使っていて、けっこう好き、と聞いたのが印象に残っている。
まあそんなこんなで、T2を買わずにD-70を買った方がよかったのではないか、と思うことがあり、D-70は心にささったトゲのようになっていた。
D-70というのはまた、買いにくいシンセである。鍵盤のおもりの接着剤が劣化して鍵盤が壊れるという、ローランドの黒歴史の一つではなかったかと思う。D-70が中古市場やオークションに出回ることは少ない。最近一つ見かけて注目していたのだが、どうも買えなかった。鍵盤の古いのを買うのは躊躇する。鍵盤を弾ける場所にちゃんと設置できるのは、今の私の部屋では2台までで、そこにはできるだけ新しいものを置きたい。調子の悪い鍵盤で弾くのは嬉しいものではないからだ。音源として使うにしても、場所を食うのが問題だ。
と、そんなことを考えている時に、MV-30を見付けた。
MV-30もなかなかにくせものである。液晶が壊れたら、修理は難しいだろう。いつゴミになるかわからない。FDD起動というのも心配だ。FDDが壊れたら、もしくはフロッピー・ディスク(FD)が壊れたら使えないのだ。FDDをシミュレーターに換装する手はあるが、それでうまく動くかどうかはやってみなければわからないし、箱を開けただけで壊してしまうかもしれない。
一度弾けるだけでもいいか、と買ってみた。
起動用のFDは3枚付いてきたが、うち2枚は起動しなかった。3枚目で起動してほっとした。液晶画面は、バックライトが生きているかどうかはよくわからないが、まったく見えないという状況ではない。

音を一つ。
Roland MV-30 A.Piano 1
ティンバー(timbre)リストの最初に入っているピアノをMinibruteで手弾きした。2オクターブしかないし、ダンパーペダルもない。どうも出てくる音量が小さく、現状では、フロアノイズがマイナス60dB程度あり、かなりノイジーである。
ただ、このピアノが私の好みであるかどうか、と問われれば、大好きである。コルグT2、ヤマハTG77のピアノに比べたら、MV-30のピアノの方がよいと思う。ほどよく丸く、ディケイが、ループが感じられるとは言え、比較的長く豊かである。1992年にSC-33を買った時にピアノの音の良さに驚いたが、1990年ごろのローランドのピアノの音が他社を凌駕していたであろうことは、MV-30でも感じられる。
もちろん、MV-30のピアノは、MONTAGEとかNord Stage 3などの、今どきのPCMピアノとは比べ物にならない。アコースティックピアノの音が欲しくてMV-30を買ったわけではない。
MV-30が欲しかったのは、SN-U110シリーズを鳴らしてみたかったからである。U-110、U-220を買って音のイキの良さに感動し、SN-U110シリーズを1~13まで買いそろえた(14と15は未入手)。それらはU-110とU-220で鳴らせばよいのだが、U-110とU-220にはローパスフィルターがなく、なんとか倍音調整をできないかと思ってきた。
D-70とMV-30は、SN-U110シリーズ対応で、レゾナンス付きLPFを持っているのだった。SN-U110の音にフィルターをかけるとどうなるか、それを知りたかった。
ただ、MV-30でSN-U110を試すまでの道のりは長そうだ。まず、システムFDのコピーから始めなければならない。電源を入れるたびに、立ち上がるかどうかドキドキする、というのは、あまり嬉しいことではない。安心して使えるようになるといいのだが。
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