
ソニーのリバーブレーター「DPS-R7」を購入した。1万900円+送料1510円。懐かしさで衝動買いをしてしまった。
DPS-R7は1991年ごろのデジタル・リバーブレーターである。「Operating Instructions」にはその紹介として「以前にリリースしたDRE-2000とMU-R201で絶賛された、最高レベルの洗練度を持つソニーのデジタル&オーディオ技術が装備されている」(和訳した)と書かれている。デジタル・リバーブレーターは、1980年代の後半にはちらほらと製品が出てきていたが、音がぼしょいものも多かったし、一方で音の良いものは高価格だったりして、なかなか買いにくい機器であった。
1980年代に私が使ったエフェクトは、コルグのテープエコー+スプリング・リバーブ「SE-300」で、これをヤマハのDX7、FB-01にかけていた。練習でもライブでも普通に使え、シーケンスにそれを深くかければあっと言わせることができた。現在は押し入れにある。1989年にコルグT2を買って、デジタルマルチエフェクターを初体験した。「音がいい」とは、残念ながらあまり思わなかった。
1990年か91年だったと思うが、ヤマハのベース用マルチエフェクター「FX500B」を買った。確か、中古で2万円だったと思う。入力が1個しかなく、でもDX7をつなぐにはそれで十分だったので、DX7専用に使っていた。コンプレッサー、ディストーション、EQ、モジュレーション、リバーブの5ブロック構成で、それぞれのオンオフを専用のボタンでできるし、パラメーターを調整する際にも、そのボタンでジャンプできるので使いやすかった。これは今でも持っていて、Fender Rhodesにつないでいる。30年を経てノーメンテで使えているのだから、ヤマハのハードウエアの作りは、やっぱり良い気がする。
1993年に、自宅に録音スタジオを作ろうと決意し、音出し可の6畳+4畳半を借りた(畳の大きさはずいぶんと小さかったが)。コンソールはAllen&HeathのGS3Vで、エフェクトは、Lexicon LXP-1、ソニーHR-MP5、BOSS SE-70というハーフラックを3段積みした。LXP-1とHR-MP5は壊れて捨てた。SE-70は、確か5000円で楽器店に引き取ってもらえたと思う。
HR-MP5は、かわいいエフェクターであったが、音が良かったという覚えはない。でも、ソニーのリバーブを、いつかまた聴いてみたいと思っていた。そんなわけで、思い出に浸るためにDPS-R7を買ってしまった。
では音を一つ。
Yamaha MOTIF-RACK XS "Full Concert Grand" with Sony DPS-R7 "11:HLR Standard large hall"
ヤマハMOTIF-RACK XSの1番ピアノ「Full Concert Grand」のリバーブを切り、代わりにDPS-R7のプリセット11番「Standard large hall」をかけたもの。鍵盤はローランドSYSTEM-8で、ベロシティが低めなので、MOTIF-RACK XSの側でマルチを使い、ベロシティの調整をした。MR-2000Sを回して録音し、手弾き無修正。失敗したくないと思うと指が震えて大変だった。いつもそうなる。この程度の曲でも、自分でまあまあと思えるほどには弾けないのだから、難しい。
今回購入したDPS-R7は、前オーナーが内部に手を入れてくれたものである。液晶は、暗いと言えば暗いが、視認に問題のあるレベルではない。レベル調整つまみ、レベルメーター、ボタン、ロータリーエンコーダーに不具合は感じない。Fireface 800からバランス接続でセンドリターンして使っているが、フロアノイズはマイナス70dB程度で、十分使える。このあたりは、さすがプロ用である。
Sound On SoundのDPS-R7レビュー記事(1991年)では、DPS-R7のライバル機種としてLexicon PCM70に言及している。スタジオを予約する時に「Lexiconはあるかい?」と尋ねてきただろうが、これからは「DPS-R7はあるかい?」と尋ねるべきではないだろうか、という。まあ、Lexicon PCM70は既に標準機になっちゃったから、DPS-R7を買わないところも多いだろうけれど、でも、音としては、DPS-R7はPCM70に負けてないぜ、という趣旨である。
まあそうだろうな、と思う。
DPS-R7は静かで良いリバーブを持っている。個性もある。ソニーのリバーブはもはや手に入らないから、まあ、コレクションする価値はあると思う。
リバーブは年々良くなっているか、というと、それはちょっと考えてしまう。ハイエンドのリバーブは年々良くなっていると思うが、リバーブのプラグインをどんどん購入するかというと、そういうことはしていない。ソフトシンセやハードシンセにもリバーブは良く付いてきて、それはもちろん便利なのだが、今求められているのは少ないつまみでぐっとした効果がかかることであり、質感を重視する会社が多いという気はしない。
そんなわけで、古今のシンセに古今のリバーブをかけると、けっこう面白い。
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